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【河瀬璃菜氏 1/3】地域の企業や自治体が持つ食の価値を消費者に伝えるために必要なこと Food
Innovation

【河瀬璃菜氏 1/3】地域の企業や自治体が持つ食の価値を消費者に伝えるために必要なこと

情報化社会の現代においても、日本各地に埋れている食材や食品、食文化は未だ多い。レシピ開発や商品監修などで、地域の食品企業や自治体からの依頼を受けて、食の新たな価値を提案しているのが、料理家でフードプロデューサーの河瀬璃菜氏だ。その河瀬氏に、地域の食品企業や自治体が抱える課題について語ってもらった。3回にわたりお届けする。

 

目次

  1. 消費者の興味を引き出す体験の場の重要性
  2. 6次産業の現場が抱えている課題とは
  3. 消費者目線でのブランディングの重要性

 

消費者の興味を引き出す体験の場の重要性

 

河瀬氏がフードプロデュースに関わるようになったのは、10年ほど前に遡る。秋田県鹿角市と共催した現地の食材を使用したフードイベントを開催したのがきっかけだった。
「料理家の私でも知らない食材も多く、そのような食材の情報や、生産者の思いが消費者にほとんど届いていないことを知りました」
河瀬氏はこのイベントで集客も担当。それまでの参加者は食品業界や自治体の関係者が圧倒的だったが、それでは真に知らせたい対象である消費者に訴求できないと考えた河瀬氏は、ミレニアル世代やメディア関係者などに声をかけた。
「実際に食べてもらって体験をしていただくと、一般の方でも皆さんすごく興味を持たれる。つまりこれまで消費者の“体験の場”がなかったということです。こうした食材や食品などが全国にはまだまだあり、その良さを体験できればもっと認知されるはずだと、地方の食に可能性を感じたのです」
一方の鹿角市もイベントで手応えを感じ、都内に期間限定のポップアップショップを開設するなど、プロモーション活動を活性化。一つのイベントを通して、消費者だけでなく自治体側も意識が変わるきっかけとなった。

 

6次産業の現場が抱えている課題とは

 

地域活性化や食材の認知向上、食品のブランディングなど、河瀬氏の元に寄せられる案件は多岐にわたる。そのため、河瀬氏はそれぞれのプロジェクトに合わせて、コピーライターや動画カメラマン、アートディレクターなど、最適な人選をアサインしチームで立体的に進めている。

河瀬氏は「課題はケースバイケースで、一概には言えない」と前置きをした上で、現在の地域や6次産業が抱える課題を挙げる。

「例えば、良い桃を作っている地域があっても、それが他の地域のブランド桃と何が違うのか、可視化や差別化ができていない。一方で『このトマトは糖度が何度あるんです』と可視化できても、ブランディング力がない。おいしいものを作っている自負はあるけれど、思いが強すぎて、消費者目線でのメリットが訴求できていない。いいものがあっても商品開発力や発信力がない。そもそもリソースがない場合もあります。厳しいことを並べましたが、一方で一次産業をしながら、商品を開発し、ブランディングし、発信するというのは、なかなか一企業でできることではないのも事実です。だからこそ、商品の客観的な分析や消費者目線を意識した商品開発・ブランディング、PRなどのアウトソーシングが必要になると思います」

 

消費者目線でのブランディングの重要性

 

さまざまな課題が挙がったが、なかでも河瀬氏が強く感じているのは消費者目線の欠如だ。

「若い女性向けの商品を開発したいとします。ところがそのチームに、決裁権を持つ女性がいないどころか、女性担当者すらいない。年配の男性たちが、自分たちがイメージした架空の女性のために作っている。もうファンタジーの世界で全くリアリティがないわけです。
家庭で料理をしたことのない人が、簡便性の高い冷凍食品を作りたいとします。ところが調理をする人が何を手間と感じているのか、普段家庭の冷凍庫にはどんな食材が入っていて、どれぐらいの容量が空いているのかが想像できない。結局過剰にパッケージングされていたり、鍋を使って温めなくてはならない商品ができあがってくるわけです」

食品である以上、味のクオリティは大前提だ。だからと言って会議室で試食をするだけではなく、自宅で保管するとどうなるのか、梱包材は適量か、調理はしやすいのか、捨てるゴミはどれぐらいの量になるのかーー。ゼロから10まで、自宅で、自分で体験をすることで、会議ではわからない問題点が浮かび上がってくる。

「6次産業には本当にいろいろな課題がありますが、まずは消費者の立場で体験すること。これこそがものづくりにおいて大切だと思っています」

 

河瀬 璃菜
Rina KAWASE
Ok3 1

料理家、フードプロデューサー
㈱SOU 代表取締役 ㈱UNAKEN取締役CCO
1988年5月8日生まれ。福岡県出身。
料理家/フードプロデューサー/SOU㈱ 代表取締役/㈱UNAKEN 取締役CCO
全国を飛び回り、正しく素敵な企業や人達が作る食材/製品の価値と想いを形に変え、消費者との間の架け橋に。
レシピ、商品、ブランド開発~育成、撮影まわりのこと、執筆、六次産業支援、コンサルまで幅広く手掛ける。

【SNS】
Twitter:https://twitter.com/linasuke0508
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<文 / 林田順子>