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【イベントレポート前編】異分野融合で新たな食の製品・サービスを”社会実装する”「Future Food Connect 2023」9月14日開催 Food
Innovation

【イベントレポート前編】異分野融合で新たな食の製品・サービスを”社会実装する”「Future Food Connect 2023」9月14日開催

2022年11月、未来×食をテーマとした「Futere Food Connect」が初開催され、2023年9月14日には虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーCIC内のVenture Café Tokyoで第二回が開催された。

現在、世界では産官学や国・地域の垣根を越えて、食にまつわる社会課題解決に取り組むことが主流になりつつある。そこで当社団法人Tokyo Food Institute(TFI)が主催する本イベントでは今回、「異分野融合で新たな食の製品・サービスを“社会実装する”」を題材に、大企業からスタートアップ、行政、シェフ、アカデミアなどが集結。それぞれの知見を交流させることで、業界等を越えた共創を創出し、社会実装の機会を提供することを目的とした。参加企業数は昨年を超え、372名が参加したイベントの模様を前編・後編にわたりリポートする。

 

目次

    1. 様々な人々が色々な立場で繋がる「Future Food Connect」(前編)
    2. 企業や団体が取り組む食の未来とは(前編)
    3. 本イベントのピッチコンテスト参加の意義(後編)
    4. 食の社会課題を解決するスタートアップ9社が登壇(後編)
    5. 様々な立場から食の未来を考えるクロストーク(後編)
    6. 参加者の声(後編)

 

様々な人々が色々な立場で繋がる「Future Food Connect」

 

イベントの冒頭では、代表理事である沢俊和から、TFIの設立背景とともにイベントの趣旨が語られた。

「世界ではSDGsの次のアクションとして、より世界を良くしていくリジェネラティブという概念が定着し始めています。この取り組みを企業が単独で、そして国内だけで行なうのは、非常に難しいことです。そこでTFIでも、早くからこのテーマに取り組んでいるイタリアのFuture Food Institute (FFI) や、スペインにある食の四年制大学 Basque Culinary Center (BCC) と連携しながら、様々な取り組みを行っています。今回は異分野融合をテーマにしていますが、様々な人々が色々な立場で繋がることで、新しい産業を作っていくことになると思っていますので、様々な人と交流をしてください」

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企業や団体が取り組む食の未来とは

 

今回のイベントはいくつかのプログラムが、隣接する2会場にて同時進行で行われた。メイン会場では最初に12社によるインスピレーショントークを開催した。

スペイン大使館経済商務部の内田瑞子氏は、スペインの国家戦略である「フード・イノベーション」を紹介。スペイン政府は現在、スタートアップへのメンタリングや資金面などの支援を積極的に行っている。日本はヨーロッパの食文化と近く、それゆえ日本のスタートアップとの連携も期待されているという。
「毎年ビルバオで行われるフードテックのカンファレンス『Food 4 Future』が2025年4月に行われます。ここに多くの日本のスタートアップに参加してほしいと、今回は招待制度も設けましたので、興味がある方はぜひ会場にいる私に声をかけてください」と、参加者に呼びかけた。

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続いて、慶應義塾大学で研究・開発が行われたOISSY株式会社の代表取締役社長、鈴木隆一氏が登壇。同社が開発したAI味覚センサー「レオ」は、これまで官能評価に頼っていた食品の味をAIが解析。この機械を使うことで、食のトレンドや競合他社と自社商品の味を科学的に比較した商品開発や、ワインと食材など、食べ合わせの相性の分析などが可能になる。
「AI味覚センサー『レオ』で解析することで、おいしさをデータから予想し、ちょっと新しい味を作り出すことができるようになるのです」

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ロート製薬株式会社が「薬に頼らない製薬会社になりたい」をスローガンにスタートさせたのが、沖縄県石垣島の自然と共生するオーガニックファーム「やえやまファーム」だ。今回は同社の中家勝則氏が登壇。
同社では大企業が持つ知見や事業規模を地場産業に反映。農畜産業から製造・販売までのすべてを事業領域とした、循環型の6次産業を展開している。
「地元の農家では難しいことでも、事業規模が大きい我々であれば挑戦できることがあります。東京から食と農の取り組みを盛り上げてくださる方も募集していますので、ぜひお声がけいただければと思っています」

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続いて、東京大学大学院農学生命科学研究科の人材育成プログラム「One Earth Guardians」を、准教授の中西もも氏が解説。人類の生活に起因する環境問題などを俯瞰的に洗い出し、解決法を研究・実践していく教育プログラムは、大学内に留まらず、他大学や企業、自治体などを巻き込む新たな取り組みに挑んでいる。
「教育プログラムという形で話をしていますが、学術機関のもう1つのミッションである研究も同時に行っています。このような活動を通じて、人間中心ではなく、地球のことを考える社会を実現する、若い人材の育成を目標としています」

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ほかにもインスピレーショントークには国内外のスタートアップやファンドなど、様々な分野の企業が参加。登壇後には、新たな視点を取り入れようとする参加者と登壇者が歓談する場面も多く見られた。

 

スタートアップを支援するピッチコンテストを開催(後編へ続く)

 

 

<文 / 林田順子>