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【イベントレポート】グローバルにつながるスタートアップ支援「Culinary Action! On The Road by BCC 2023」開催 Food
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【イベントレポート】グローバルにつながるスタートアップ支援「Culinary Action! On The Road by BCC 2023」開催

先鋭的な料理の学術機関として知られるスペイン・バスク州の料理大学Basque Culinary Center(BCC)。同大学では、新たな食の価値の創出を行う次世代の起業家支援を目的としたコンテスト「Culinary Action On the road by BCC」を毎年世界5か国で開催。昨年は日本でも初開催され、優勝したグリーンエース社は、同年BCCで行われたグローバルピッチコンテストに招待されたほか、BCCの協力のもと、新たな製品開発などを進めている。
その第二回が2023年10月19日、Tokyo Food Institute(TFI)とイタリアのFuture Food Institute(FFI)との協働により、京橋の東京スクエアガーデンで開催された。昨年より規模を拡大して行われた今回のイベントの模様をリポートする。

目次

  1. 連携する三者が考える食の未来とイベントの意義
  2. ステークホルダーが語るこれからの食産業に必要な視点
  3. 食の新たな価値を創生する5社によるピッチコンテスト

 

連携する三者が考える食の未来とイベントの意義

 

イントロダクションでは当イベントを共催する3団体による挨拶からスタートした。
最初にTFIの代表理事である沢俊和が登壇。「TFIでは東京建物とともに、社会課題と企業利益を両立したリジェネラティブな街づくりを目指しています。まずは現在、豊かな食の歴史を持つ京橋エリアで、食を中心とした様々な施設の活用や活動を行っています。今後もTFIがもつネットワーク、東京建物が所有する建物を活用し、BCCやFFIと連携をとりながら、社会課題解決のために産業を超えた媒介者として、具体的活動を積極的に行っていきます」

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続いて登壇したのはFFIのAlessandro Fusco氏。FFIでは世界中の都市と連携して、食を中心とした社会課題解決につながるエコシステムの構築を手がけており、世界最大規模のグローバルネットワークとしても知られている。
「新しいマインドセットを創出するためには、政治的、経済的、文化的側面から、さまざまなアプローチをし、それらを統合して、社会に適応していく必要があります。FFIではこれまで様々な国で行ってきた活動により得た知見を活かし、京橋を食を中心とした未来の生活を考えるリビングラボとしてコミットしていきたい」

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続いてBCCのentrepreneurship manager のAnder Lopez氏が登壇し、BCCの説明とともに、本イベントの意義を語った。
「なぜ学術機関がベンチャー企業を支援するのか。それは多角的に食を研究するBCCとベンチャーが結びつくことで。食のエコシステムを世界中で発展させることができると考えているからです。とくに日本は世界の、そして食のハブとして重要な役割を果たすと考えています」と語った。

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ステークホルダーが語るこれからの食産業に必要な視点

 

ピッチコンテストに先駆けて、これからの日本の食産業に求められる課題をテーマにした3つのラウンドテーブルも開催された。

1部では「昨年の開催時に、ローカルとグローバルの視点を結びつけることが日本のエコシステムに有効だと思った」というBCCのAnder Lopez氏をモデレーターに国際投資家4名が登壇。
参加したのは、スタートアップへのベンチャーキャピタル投資を行うWhite Star Capitalの長尾俊氏、世界的な視点とネットワークで日本のエコシステム構築に貢献するDesign for Venturesの太田明日美氏、日本企業を対象とした投資戦略、フードテックへの投資も行うValue CreateのBarry O’Neill氏、バイオベンチャーへの投資活動を行い、フード領域への関心も高いBusiness AngelのNachi Das氏。

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世界的な視点から日本の食文化や技術を評価する一方で、「日本は至近距離の視点でしか物事を見られない側面がある。横断的イノベーションの可能性ももっと探るべきで、そのためにキャピタリストやBCCのような触媒を入れることが重要になるだろう」「例えば、国内において日本酒はマイナスマーケットの影響を受けているが、海外では大きな注目を集めている。また優秀なシェフは海外に進出し、素晴らしいレストランをオープンさせている。他国に技術やマーケットがあるのだから、国外の市場にアクセスしていく逞しさが必要である」と、現在抱える課題とともに、日本のエコシステムの可能性についても示唆した。

2部では「ガストロノミーサイエンス」をテーマに、いかにアウトプットをするべきかを紐解いた。登壇したのは、ミクソロジーの第一人者として知られ、国内外でバーを展開する南雲主于三氏、味覚の数値化の研究・開発を行うOISSYの鈴木隆一氏、植物性油脂の世界的パイオニア不二製油の富研一氏。

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南雲氏は健康志向が高まるなかで、持続的に酒を楽しむにはどうするのかが、今後世界で求められるだろうと語った。鈴木氏は白米や魚介類を食文化としてもつ日本人の味覚の鋭さに触れ、今後、日本が世界の食を牽引する存在になる可能性があると示唆。富氏は代替食の代表である大豆ミートがなぜ普及しないのかを入り口に、消費者が得る食における満足感とは何かを解説した。

3部では「ジャパンエコシステムエージェンツ」をテーマに、食と飲料のプロフェッショナルの共同体であるGourmet ProのPolina Oba氏、サステナブルフードの啓蒙や開発を行うSustainable Food Asiaの海野慧氏、約150年の歴史を持つ蒲鉾店のアドバイザーを担うなど、日本の食文化人も精通するFood CompaniesのKevin Suzuki氏が登壇。サステナビリティ的観点の遅れが見られる日本市場で、今後はZ世代の活躍が期待されること、人間と人的リソースへの投資の重要性、今後起こるであろうカスタマーに対してのビジネスのあり方の変容、世界市場に向けてどのような考え方を持つべきかなど、日本の食ビジネスについて多角的な意見が飛び交った。

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食の新たな価値を創生する5社によるピッチコンテスト

 

ピッチコンテストには、様々な観点から食の新たな可能性を示した5社が参加。

OISSY社は苦味、塩味、旨味、甘味、酸味を5つのセンサーで検知し、ニューロンネットワーク分析で味覚を測定。ベストセラーの味の分析をし、自社製品と比較をしたり、味のマッチングなどを行っている。

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アパレル産業から参入したのがCRESAVA社だ。アパレル産業の廃棄物は、現在、世界中で大きな社会問題となっている。同社では廃棄された繊維、生地、製品を回収し、全てをカーボン化して、肥料として再生。アパレルとアグリカルチャーという新たなエコシステムを実現した。

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クオンクロップ社の提供するMYエコものさしは、食のバリューチェーンの細分化により、サスティナビリティを総合的に評価し、可視化することができるサービス。企業はサステナブルな商品開発や提供を行うことができ、継続的な食産業を未来に残すことができる。

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おからテクノロジーズ社のOKARATは、これまで廃棄されてきたおからの栄養価などに着目。全豆連と提携して全国から回収したおからを、グラノーラやクッキーなどとして販売している。自社でR&Dを持つため、スピード感のある開発や改良を可能にした。

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長崎大学発のベンチャーBooon社は、水産養殖飼料である魚粉の高騰が、水産業を圧迫していることから、昆虫(ミルワーム)を飼料化することに成功。今後は畜産業への拡大も視野に研究を続けている。

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5社のピッチコンテストの審査が行われる間、ステージでは基調講演も行われた。
BCCイノベーションに所属するBegoña Rodriguez氏は、6年前にスタートした同セクションがなぜここまで成長したかを、12のトピックスを挙げて解説。
日本でのフードテックの認知拡大に貢献した外村仁氏は日本の料理界におけるBCCの重要性や、世界のフードテックのトレンドなどについて語った。

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そして今回のピッチコンテストでは3つの賞が用意された。
FFI賞に選ばれたクオンクロップ社には、BCCのブートキャンプへの招待などが贈られた。
TFI賞に選ばれたのはCRESAVA社。東京建物からは事業拡大のために活用できる場所の提供とスタートアップ支援、グローバルネットワーキングの機会などが与えられた。
BCC賞に選ばれ、本国で行われるグローバルファイナルピッチへの出場権を得たのはOISSY社。BCCの研究開発施設やネットワーク全体との交流によって、新たなエコシステムを創出できる可能性が評価された。副賞として、食を全方位で捉えるBCCの強力メンター陣によるメンタリングセッションが20時間授与された。

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また本イベントでは、ブロンズパートナーであるアサヒビールの飲料や食品が提供された。ピッチコンテスト終了後には、これらの商品を楽しみながら、ネットワーキングの交流会が行われ、食にまつわる様々な立場の人々が闊達に意見交換する姿が見られた。

TFIでは今後も国内外の企業やアカデミア、自治体などと連携し、スタートアップの機会創出や、新たな食の価値についてのイベントを開催していく。今後の動向にも注目をしてほしい。

 

<文 / 林田順子>