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第二週参加レポート「再生型都市(Regenerative City)」 Food
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第二週参加レポート「再生型都市(Regenerative City)」

「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP JAPAN EDITION」 第二週参加レポート「再生型都市(Regenerative City)」

 

2022年4月11日〜4月15日にかけて、「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP」の第二週目、「再生型都市(Regenerative City)」をテーマとしたセッションが実施された。
参加者は、科学技術を詰め込んだドバイのサステナブルシティや、日本企業の海外技術移転の事例から、科学技術の可能性について学んだ。また、未利用資源活用のケーススタディーや、子ども向けの食農教育の事例からは、持続可能でレジリエンスなコミュニティを作るためのツールとして、身の回りに眠っている資源の価値や周囲を巻き込み変化を起こしていく力について学ぶことができた。

 

今週の学び

  1. 科学技術を詰め込んだサステナブルシティ
  2. 持続可能な技術移転に必要なもの
  3. 眠っている未利用資源の活用
  4. コミュニティを育む:都市部における食料安全保障のために学校ができること

 

科学技術を詰め込んだサステナブルシティ

 

一般的に都市は消費の中心地となっているが、科学技術との融合で持続可能な開発を加速させる存在にもなり得る。中東地域初のサステナブルシティである「The Sustainable City」は、最先端の技術を応用することで環境負荷を最小限に抑えている。今回は、サステナブルシティの開発を担当した、Diamond Developersの最高サステナビリティ責任者である、Karim El-Jisr氏から2021年にこの都市を作り上げた背景について話を聞いた。

2ドバイのサステナブルシティ(The Sustainable City in Dubai

同社のチームは、日本の藤沢市を含めた世界6カ国のサステナブルな都市を訪れ、それらの知見を集約して中東地域初の完全持続可能なコミュニティである「サステナブルシティ」を建設した。現在も、温室の耐久性やコンテナ栽培のコストといった課題はあるが、エネルギー、水、建築材料、モビリティ、廃棄物管理、食の分野で持続的な技術を取り入れ、サステナブルを体現する存在となっている。その中でも食に関する取り組みを一部抜粋して紹介する。

  • ビニールハウスに代わる耐久性に優れたグリーンハウス内において、トマトやバジルなどのマイクログリーンを栽培
  • コンテナを活用した垂直・水平農業による食料生産システムの導入
  • 乾燥地域でも安定して生育するモリンガやマンゴー、デーツの栽培
  • スピルリナの培養と微生物由来のタンパク源を活用
  • 住民を巻き込んだコミュニティガーデンにおける野菜の栽培

また、食料の安全保障に関する問題は、サステナブルシティの解決すべき課題のひとつとして紹介された。現在食料の多くを海外からの輸入に頼っている日本にとっても、共に協力して解決策を見出すことが期待される。

 

持続可能な技術移転に必要なもの

 

UNIDO(国際連合工業開発機関)は、国連の専門機関のひとつで、開発途上国や市場経済移行国において包摂的で持続可能な産業開発を促進し、持続的な経済の発展を支援している。今回は、UNIDO ITPO TOKYO副長のFerda Gelegen氏より、食農分野における日本企業の海外途上国への技術移転事例について、3つのケーススタディーを紹介いただいた。

講義の中では、少量の水で野菜を育てる技術や、冷凍冷蔵技術、籾殻をリサイクルして固形燃料にする技術が登場した。また、後半では技術移転を考える企業が意識しておくべきことについて触れられた。コスト、投資、現地の規制の課題は、技術の応用やビジネスモデルの持続性の妨げになることが多く、それらの障害を乗り越えることが必要となる。それらの課題を乗り越えるためには、現地とのパートナーシップが重要な要素であり、技術、コスト、規制、ビジネスモデルの持続可能性のバランスをとることが、技術移転を持続可能にするポイントとなるそうだ。

 

眠っている未利用資源の活用

 

「最高の資源とは、見えているのに見えていないものである。」

ボローニャ大学名誉教授のGianni Lorenzoni氏と、Future Food アカデミックディレクターであるSonia Massari氏は、この言葉と共に、眠っている未利用資源の発掘・活用の大切さを説いた。未利用資源の活用事例ケーススタディとして、コロンビアにおけるミノカサゴの活用事例が登場した。ハリケーンの影響でカリビア海に突如現れたミノカサゴは、白身は美味だが、針に毒があり周辺海域で天敵がおらず、漁業に大きなダメージを与えた。この課題に対して、政府は多様なステークホルダーを巻き込む解決方法を選択した。以下にその一例を紹介する。

  • 漁師を巻き込んだミノカサゴの釣り大会を実施し、ミノカサゴ捕獲のための漁具を開発
  • 周辺地域の主婦を巻き込み、ミノカサゴを活用したアクセサリーの製作ワークショップを開催(写真2)
  • シェフを対象に、SNSを活用してもらうため、ミノカサゴを使用したフードスタイリング・写真撮影のイベントを実施
  • ミノカサゴと伝統料理を融合させた料理コンテストの開催

異なるステークホルダーが共同し、ただ手伝うだけではなく、共に漁具や食品、アクセサリーを発展させていく。眠っている未利用資源を発掘・活用することは、人々が自分自身のプロダクトとして自信を持てるような製品を共に作っていくことでもあるのです。

3
ミノカサゴを用いたアクセサリー


コミュニティを育む:都市部における食料安全保障のために学校ができること

 

特に貧しい地域や社会から取り残された都市部において、食料安全保障を確保することは、教育や食育と密接に関連している。こう話すのは、Green Bronx Machineの創設者であるStephen Ritz氏である。Stephen氏はブロンクス(アメリカ)のような食糧難にある地区の学校に対して、料理やガーデニングプログラム、タワーガーデン設備を導入することで、食糧不足、労働力開発、教育学の発展に取り組み、健康的な生活と学習を促進している。彼が始めた取り組みは2022年5月時点でアメリカを含めた6カ国で合計550回実施され、今後5年間の間に10倍に成長させることを予定している。挑戦を続けるStephen氏から、活動拡大の秘訣を伺った。

「私は決して困難に焦点を当てません。いつもチャンス(機会)に焦点を当てているのです。私たちは100年まえに馬を使っていましたが、車になり、現在はテスラもあります。チャレンジはチャンスになり得るのです。毎日の小さな進歩がコミュニティや周囲を変えていくことができるのです。」

また、食料安全保障に関する課題に対して個人レベルでどう向き合うべきか?という質問に対して、Stephen氏からブートキャンプの参加者が日常生活で応用できる考え方を紹介いただいた。

「誰もが小さな一歩から始めることができます。このブートキャンプはその始まりになるでしょう。ここに集まっている一人一人が、周りに貢献できるような何かを持っているのです。私は自分にいつもこう言い聞かせます。自分を無駄にしないで、この瞬間を無駄にしないで、と。」

第一週目の再生農業に関するレポートはこちらをご覧ください。次週は再生可能な海洋についてのセッションを紹介予定です。お楽しみに。

 

<執筆/藤澤みのり>