「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP JAPAN EDITION」 キックオフレポート
世界のサステナブルな食の可能性を学び、ネットワークを形成する、「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP JAPAN EDITION」 キックオフ
目次
- Food & Climate Shapers Digital Boot Campの開催背景
- Food & Climate Shapers Digital Boot Camp日本版とは?
- デジタルブートキャンププログラム
- キックオフからの学び
- 参加者の声
Food & Climate Shapers Digital Boot Campの開催背景
意思を行動に移し、行動を課題解決に変化させていく。この変化こそ、環境や経済、人道の観点を含めた社会全体に対して影響を与え、現代における課題解決に必要とされるものである。
本ブートキャンプの狙いは、持続可能な開発目標(SDGs)のすべてに共通する「食」を起点として、複数の専門分野との真のつながりを生み出すこと、複雑性を受け入れ、各要素を点で結ぶこと、柔軟性を鍛えること、そして体験的に学ぶことにある。
Food & Climate Shapers Digital Boot Camp日本版とは?
Food & Climate Shapers Digital Boot Campは、「Future Food Institute」と「FAO(国際連合食糧農業機関)」が共同設計した、革新的かつ体験型の学習方法論である。「Future Food Institute」は、イタリアを拠点とする国際的なエコシステムであり、地球上の生命に食を通じて持続的でポジティブな変化をもたらすことを目的とする。「FAO」は、世界の食糧生産と流通の改善を通じた、飢餓撲滅を目的とした国連の専門機関である。
デジタルブートキャンプは、2021年に「最も革新的な新しいプログラム-海外留学賞(Most Innovative New Program – Study Abroad Award in 2021)」に認定されている。最高のイノベーションは、多様なアイデアや視点が混ざり合うことにより生まれる。そのため本ブートキャンプでは、若者、起業家、シェフ、政策立案者、研究者、イノベーターといった多様な「Climate shaper(気候変動に対して行動する者)」に対して、同プログラムを通じたトレーニングを実施している。これまで世界中で合計6回のブートキャンプを開催し、2022年4月1日、デジタルブートキャンプ初の日本版として、日本の言語、課題、開催時間に合わせて再構成された。
デジタルブートキャンププログラム
オンラインとオフラインを交えた5週間の短期集中ワークで、再生を意味する「リジェネラティブ」をメインテーマとして「農場」「都市」「キッチン」「海」の4分野について学んだ。日本全国から24名の参加者、世界中から集まった21名の刺激的なスピーカーと専門家、そしてFuture Food Ecosystemの9名のメンターが参加した。
デジタルブートキャンプ日本版では、4月初旬のキックオフから始まり、リジェネラティブに関わる4つの異なる分野を探求し、ハッカソンで締めくくられる構成となっている。各週は、3つの異なるトレーニング(Future Food Learning Approach)によって構成されており、フードシステムの異なるセグメントから、課題、可能性、洞察、実際の事例、ソリューションに触れる。
INSPIRATION:
学びとイノベーションを融合させ、先見性のある専門家の視点から、未来の展望を得る。
ASPIRATION:
自分の考えを認識し、自分の潜在能力を引き出していく。
ACTION:
アイデアを行動に移し、地域社会を変革する。
キックオフからの学び
1.食は、外交・経済・個人と社会の幸福・文化など、すべてのSDGsを含む、すべての人とすべてのものをつなぐ
今日、私たちが日々行っている食の選択は、私たちの健康、地球の健康、そして地域社会の健康から切り離されている。このことは、飢餓で亡くなる人がいる一方で、太り過ぎや栄養不足による病気に苦しむ人がいる、といった現代のフードシステムのパラドックスにも現れている。そして、世界の温室効果ガス排出の3分の1は食糧に由来している一方で、食糧廃棄はいまだに深刻な懸念事項となっている。その一方で、食には素晴らしい魅力がある。外交、経済、個人と社会の幸福、文化など、すべてのSDGsを含むすべての人とものをつなぐことができることはその魅力の一つである。
「食は生命であり、栄養であり、エネルギーであり、伝統とアイデンティティの象徴です。食は、それを作る人々、それを取り巻く環境、生物多様性に関わっています。食べ物について話すとき、言語を超えて私たちをつないでくれます。食事を囲むテーブルで喧嘩をする人はいません。」Sara Roversi, Future Food Institute 創設者
2.繁栄思考 – より良い未来を築くためには、人間が食と自然のシステム(エコシステム)の中の不可欠な一部であり、繁栄を包括的に考えることが必要となる。これが、繁栄思考(proserity thinking)が目指すものである。
私たちは、社会、環境、経済、文化の相互的な深い関わりから、そのバランスを取り戻すことが必要とされる。それは、人間を頂点とする人間中心のイノベーション(エゴシステム)ではなく、人間を食と自然のエコシステムの一部と捉えることを意味する。繁栄思考(prosperity thinking)は、地球の生態資源の範囲内で、人類すべてのニーズを満たす世界をデザインするための方法論的アプローチである。その目的は、経済成長だけでなく、社会的、環境的な幸福も含め、包括的な繁栄の考え方を共有し、より良いフードシステムを設計できるようにすることにある。これは、2050年に100億人の人口をどう支えるか、さらにその先の2100年に人口が再び減少するという食の未来に関する課題を解決する上で極めて重要である。
3.ジャズから学ぶ、つながりのある生態系の構築 – 強固でレジリエンスのある生態系を構築するためには、ジャズのように適切な環境に適切な人材を投入することが大切である。
強固でレジリエンスのあるエコシステムを構築するためには、クリエイティビティを評価し、イノベーティブな人々を結びつけ、アイデア開発を支援する環境を構築することが重要である。通常、初期段階のアイディアや構想を持つイノベーターに対する世間からの注目度は低いが、そのアイディアに耳を傾け、サポートできるような環境を整えていくことが必要となる。東京を拠点とする起業家で、EDGEof Technology JapanのチーフエコシステムオフィサーであるTodd Porter氏も、社会起業家の概念を開拓した際にグローバルコミュニティーにおいて、その重要さを実感していたそうだ。
「適切な環境に適切な人がいる。計画性よりもジャズのようなものです。日本は計画的になりがちですが、少しジャズを混ぜればいいんです。」Todd Porter, EDGEof Technology
参加者の声
最後に参加者の自己紹介が行われ、学生や食品メーカーの方、起業を検討している方など様々なバックグラウンドを持つ参加者がブートキャンプに対する期待を語った。参加者からは、「食を通じて、各種課題を自分ごととして捉えられるようになりたい。」「食に関わる人たちとの意見交換や、ネットワークを築いていきたい。」といった声が上がっていた。
<執筆/藤澤みのり>