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【河瀬璃菜氏 2/3】商品プロデュースの際に重要な「突破力」 Food
Innovation

【河瀬璃菜氏 2/3】商品プロデュースの際に重要な「突破力」

膨大な情報や商品が溢れかえるなか、商品や技術に独自性やこだわりを持っていても、それを消費者に届けることは至難の業だ。商品プロデュースを行う河瀬璃菜氏は、どのようにそのハードルを超えていくのか。実際に河瀬氏が手がけた事例を解説してもらった。

目次

  1. リブランディングした「山田のフラヰ」は、SNSやメディアで話題に
  2. 2年をかけて完成した、気分が上がる土鍋プロジェクト
  3. 脱普通を大切に。突き抜けたものが受ける時代

 

リブランディングした「山田のフラヰ」は、SNSやメディアで話題に

 

鹿児島県志布志市の水産加工会社・山田水産の「山田のフラヰ」は、西郷隆盛を彷彿とさせるキャラクターがSNSで話題となり、各種メディアなどでも紹介された。2018年から発売を開始し、売上個数630万枚を超える大ヒット商品である。

「私は基本的に新規の商品作りから関わることが多いのですが、このときは既存の商品のリブランディングをして欲しいという依頼でした。私はゼロから1を作る人の熱量が一番大事だと思っていて、そのスタートから関わらないと、一貫性が出せなかったり、チグハグになることもあるので、既に出来上がっている商品を任せられることに、正直悩みました。ただ、原料コストの高い日本で水揚げされた魚を使用し、安全に加工され、消費者にとって便利で食卓の役に立てる商品だということに価値を感じましたし、試食をしたところとてもおいしかったんです。これならいけると思い、100%こちらにお任せいただく形でお受けしました」

商品は既にあるため、必要なのはコンセプト作りとなる。河瀬氏はまずクリエイティブチームと共にビジュアルを一新。元のパッケージはスーパーなどでよく見かける一般的なデザインだったのに対し、キャラクターを立てて、鹿児島・志布志という地と絡めたストーリー性をもたせることで、一度見たら記憶に残る独自の世界観を構築した。また、山田水産の主要取引先であるスーパーマーケットへの施策にも力を入れた。

「まず、スーパーで最も購入している主婦層をメインターゲットとして、主婦層の抱える悩みを想像・抽出し、その解決策として山田のフラヰを訴求するようにしました。普段から感じている料理の悩みにおいてわかりやすいメリットを言語化して提示することで、自分ごととして認識してもらいやすくなるからです。
そこで、主婦層の料理における悩みとして、「肉だけではなく魚を食べたい、食べさせたいが、魚料理を作ってもなかなか子どもが食べてくれない」、「揚げ物を家で作るのは手間だが、家族に手軽に食べさせたい」、「安心安全に作られた加工食品を食べたい、食べさせたい」の3つを主として抽出。これらに対して、山田のフラヰはみんなが大好きな揚げ物であり且つ魚料理であること、また、トースターでサクサクの美味しいフラヰが作れること、さらに国産魚のみを使い国内で丁寧に加工した安心安全な商品であるという、まさに「救世主」な商品であることを訴求しました。」

このように、日常で主婦層が感じている悩みについて様々な方向性から具体的解決策を見せてあげることや、クリエイティブチームとの制作における目新しいビジュアルやSNSでの話題作りを仕掛けることで、主婦層の購入につながっていった。

「ただ一番大切なのは、リピートして購入いただけることだと考えています。これは商品自体の美味しさや安全性、信頼性があってこそだと思います。」

 

2年をかけて完成した、気分が上がる土鍋プロジェクト

 

5waypot

5通りの使い方ができる一人用の土鍋を有田焼の窯元と作るプロジェクト「5way pot」では、プロデュースを担当した。
有田焼の窯元が独自に開発した耐火性、耐久性、保温性に優れた陶土を使用しているため、一般的な土鍋よりも高温に耐えることができ、遠赤外線効果によりじっくりと火を通すことで食材の旨味を引き出し、自宅で本格的な料理を楽しむことができる商品だ。

「土鍋というと黒、茶色、白が定番です。そこでキッチンや食卓に置いたときにテンションが上がる色に、そして電子レンジ、直火、オーブンでも使え、調理道具として、食器としても使える利便性をコンセプトにしました」

この土鍋をどのように消費者に届けるかを考える際も、河瀬氏はターゲットを設定し、ターゲットが抱える悩みを抽出、そしてその悩みを解決する商品として土鍋を訴求した。

「土鍋のターゲットは、都心に住む一人暮らしの女性または二人暮らしの層を想定。その層の悩みの一つとして、『キッチンが狭くて色々な種類の調理道具を揃えられない』、『コンロが1つまたは2つしかないので並行して調理ができない』というものがありました。これについては、直火もレンジもオーブンも使える土鍋なので、調理道具をたくさん揃える必要がない上に、コンロとレンジを使い、この鍋で並行して調理ができることを訴求。レンジ調理の利便性も合わせて提案しました。
さらに、悩みとして『洗い物が増えるのが嫌だし、一人の時は鍋からそのまま食べているが、それに対して罪悪感がある』という声もありました。そこで、この土鍋なら調理後そのまま食卓に出して食器として使っても、見た目も可愛いので罪悪感を覚えずに済むことを訴求しました。」

この土鍋の色合いについては、開発期間は当初の2倍となる2年を有した。というのも、土鍋は直火にかけるため、陶器とは使用する釉薬が異なる。さらに薄い色は、調理過程でついた汚れが目立ちやすい。思い描いた美しい発色で、汚れにも強い釉薬作りが課題となったが、制作は難航。『中途半端なものは出したくない』という河瀬氏の思いから、何度も試作を重ね、完成に至った。

5waypot2

伝統的なアイテムに、時代のニーズに合わせた新しい付加価値を与えたことで、顧客層は若い世代にも拡大。現在は第二弾のプロジェクトも進行中だという。
このように、河瀬氏は、商品を開発しその良さを消費者に届ける際は、誰のどんな悩みを解決できるか、誰のどんな生活に寄り添って豊かにすることができるかを具体的に想像した上で提案。それにより、ターゲット層に自分ごととして認識、共感され、購入へと繋がるのである。

「窯元さんには本当にご迷惑をおかけしたと思います。ただ、どこにでもある土鍋の色にはしたくなかった。おかげできれいな水色とネイビーとグレーの土鍋が出来上がりました」

 

脱普通を大切に。突き抜けたものが受ける時代

 

これらの商品プロデュースで河瀬氏が大切にしてきたのが、商品の突破力だ。

「例えば私に商品を売るためのプレゼンをしてみてくださいと言うと、『おしゃれなんです』『結構おいしいんです』とふわっとした説明をされることが多くあります。皆さん、どこかで『このぐらいのトーンじゃないといけないのでは』という不安のリミッターみたいなものがあって、突き抜けられないようです。だけど、そういう考えで開発をすると、なんとなくどこかで見たことがある商品になりやすいのです。今の時代はマニアックな人、スペシャリストが注目をされやすく、そういった突き抜けたものが格好いいとされる時代です。今の商品開発は突き抜けるぐらいの特徴があったほうが絶対にいいのです」

もちろん食品である以上「おいしい」のは大前提だ。

「最近は外側だけおしゃれな商品も多くて、実際に食べてみるとがっかりすることがあります。その商品を自信をもって、家族や親友に勧められるのかというのは、商品のプロデュースにおいてとても大切だと思っています」

※次回、【河瀬璃菜氏 3/3】ものづくりを成功に導くためのチームの作り方 は10月公開予定

 

河瀬 璃菜
Rina KAWASE
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料理家、フードプロデューサー
㈱SOU 代表取締役 ㈱UNAKEN取締役CCO
1988年5月8日生まれ。福岡県出身。
料理家/フードプロデューサー/SOU㈱ 代表取締役/㈱UNAKEN 取締役CCO
全国を飛び回り、正しく素敵な企業や人達が作る食材/製品の価値と想いを形に変え、消費者との間の架け橋に。
レシピ、商品、ブランド開発~育成、撮影まわりのこと、執筆、六次産業支援、コンサルまで幅広く手掛ける。

【SNS】
Twitter:https://twitter.com/linasuke0508
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Instagram:https://www.instagram.com/linasuke0508/

 

 

<文 / 林田順子>