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【イベントレポート前編】新たな食の価値創造を目指し産官学が国・地域・業種を超えて集結「Future Food Connect」11月10日開催 Food
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【イベントレポート前編】新たな食の価値創造を目指し産官学が国・地域・業種を超えて集結「Future Food Connect」11月10日開催

2022年11月10日、未来×食をテーマとした「Future Food Connect」が虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーCIC内のVenture Café Tokyoで開催された。現在、世界では産官学や国・地域の垣根を超えて、食にまつわる社会課題解決に取り組むのが主流となりつつある。 そこで一般社団法人Tokyo Food Institute (TFI)では、日本で社会課題の解決に取り組む人や企業、そしてエリアの媒介者となり、食の発展や新たな食の価値の創出や発信を行っている。

TFIが主催した今回の「Future Food Connect」もその活動の一環として開催された。大企業からスタートアップ、シェフ、行政、アカデミアなどが「未来の食」をテーマに、それぞれの立場で培った知見を交流させることで、ネットワークを広げ、社会実装の機会を提供することを目的としている。業界内外からの注目度は高く、会場の定員200人は早々に満席となり、オンライン視聴も含め、418人が参加。その模様を前編・後編にわたりリポートする。

 

目次

    1. 食に関する企業や人を媒介するイベント「Future Food Connect」(前編)
    2. 大企業や団体が考える食の未来(前編)
    3. スタートアップを支援するピッチコンテストを開催(後編)
    4. 食の未来を考えるクロストークは熱い議論に(後編)
    5. 参加者の声(後編)

 

食に関する企業や人を媒介するイベント「Future Food Connect」

 

「Future Food Connect」は食の未来に関わる人、興味を持つ人が、カジュアルな環境で学びあい、繋がり、思いを共有できる場作りを目指して企画された。

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冒頭、代表理事である沢俊和からTFIのこれまでの実績が紹介されるとともに、「イタリアからはFuture Food、スペインからはBasque Culinary Centerやスペイン政府観光局、また大企業からアカデミアまで、エリアや境界を超えてお集まりいただいています。この場が新たな食の価値を生み出すきっかけとなればと思っていますので、登壇者やクロストークに参加される方々ともぜひ交流を持っていただければと思っています」の挨拶でイベントはスタートした。

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大企業や団体が考える食の未来

 

今回のイベントは隣接する2会場で、同時進行で行われた。メイン会場では始めにインスピレーショントークを開催。

明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授は、研究開発に携わった味覚メディアについて解説。電気を利用して、減塩料理でも塩味を強く感じさせる食器やカトラリー「エレキソルト」、味を数値化することで、遠隔操作で味を再現することができる「テレイート」など、食領域の最新テクノロジーの実例を紹介。味覚を情報のひとつ捉えることによって起こりうる、食ビジネスの可能性について語った。

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エスビー食品株式会社は、昨年10月に新設された食文化未来研究所から南野新氏が登壇。食文化未来研究所は食の長期的課題や食文化の進化を探索し、視座を広げることを目的として設立された。現在、食のグローバル課題の共有や、社内ピッチコンテストを実施することで、社員が食の未来を描く機会も創出している。今後は「香りをおいしさの真ん中に」をテーマに、社内外を問わず様々なプレイヤーと共創し、いろいろな可能性を模索したいという。

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カゴメ株式会社・一般社団法人Plant Based Lifestyle Labの佐藤慎哉氏のテーマは、プラントベースフードの現状と課題だ。同社はインバウンド需要による外食産業からのヴィーガン対応への声に応え、プラントベースフードを開発。コロナ禍の内食需要の高まりから、家庭用商品の展開もスタートしたが、1社による自社開発や認知向上への限界を感じたという。そこでオープンイノベーションの推進、他社連携強化による商品開発を推進するとともに、一般社団法人を設立し、45の加盟社とともにプラントベースの認証やルール整備などを進めている。

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食のエコシステムを整備するスペインからは、大使館員の内田瑞子氏が参加。スペイン政府は毎年、交流を強化する食のパートナー国を選出しており、2023年は食文化の共通項が多いことなどから、日本が選ばれている。2023年5月にはバスク州ビスカヤ県ビルバオで未来のフードテックを創造する食技術の祭典「Food 4 FUTERE」が開催され、世界中から関係者が参加する。現在スペインで求められている日本の出汁や旨味文化、和のイノベーションなどを提案したいという企業はスペイン大使館に声をかけてほしいと呼び掛けた。

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味の素株式会社執行役ビジネスモデル変革担当R&B企画部長の柏原正樹氏は、消費者の行動変容予測と、それに伴う成長戦略について語った。気候変動、資源枯渇、生物多様性の喪失、低栄養&過剰栄養、健康状態の可視化、幸福感の変化などを視野に、今後フードシステムやヘルスケアシステムは生活者を中心に変化する必要があると説いた柏原氏。2030年に向けて、味の素は同社の強みであるヘルスケア、フード&ウエルネス、I C T、グリーンの4つの成長領域を設定。「地球とともに生きる健やかで豊かな未来」を実現させたいと思う企業へ、味の素の強みを活用した価値の共創についての対話をスタートしましょうと呼び掛けた。

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スタートアップを支援するピッチコンテストを開催(後編へ続く)

 

 

<文 / 林田順子>