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【イベントレポート前編】「リジェネレーション」がテーマの国際カンファレンス「RegenerAction Japan 2023」開催 Food
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【イベントレポート前編】「リジェネレーション」がテーマの国際カンファレンス「RegenerAction Japan 2023」開催

2023年12月6日、東京建物、Future Food Institute、Tokyo Food Instituteが共催する「RegenerAction Japan 2023」が、東京・京橋にある東京スクエアガーデンで初開催された。

カンファレンスのテーマは「リジェネレーション」。
日本でも徐々に認知が広がっているリジェネレーションという考え方は、資源や環境を積極的に回復・再生することを意味し、欧米を中心にサステナブルの次のフェーズとして注目を集めている。
本カンファレンスの午前は「リジェネレーションの思考と世界の潮流を学ぶ」、午後は「リジェネレーションの実践例を学ぶ」とした2部構成で開催。多方面の企業や識者、スタートアップらがスピーカーとして参加した。
このイベントの様子を前編・後編にわたりお伝えする。

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オープニングでは八重洲・京橋・日本橋エリアでリジェネラティブな街づくりを計画する東京建物 代表取締役専務執行役員の小澤克人氏が登壇。
「成熟した都市である東京からリジェネレーションを発信・実践していくことで、世界のロールモデルとなるような都市を目指したい」と開催の趣旨が説明されるとともに、企業や団体がリジェネラティブをどのように取り入れるべきか、そのアイデアの端緒になればとカンファレンスの意義を語った。

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世界中で広がるリジェネラティブな活動

 

午前の部は8つのセッションで行われた。

東京都政策企画局技監 安部文洋氏は「サステナブル・リカバリーの実現」をテーマに、東京都が2040年までに目指している「強靭で持続可能な社会」について説明。現在は東京ベイエリアを持続可能な都市モデルとし、次世代の育成やスタートアップ支援を通じ、世界にその取り組みを発信していく。

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イタリア・ポリカをはじめ、行政や企業、アカデミアと連携し、エコシステムの形成に取り組んでいるのがFuture Food Institute(FFI)だ。今回はSara Roversi氏が登壇し、「総合型経済社会への変革の革新となる『リジェネレーション』」をテーマに、FFIのこれまでの取り組みを紹介。またCOP28が目指すサステナブルの次の取り組みを解説。

「ポリカでは90以上のプロジェクトが進行していますが、人々に新たな思想を根付かせるためには、信頼関係を構築し、新たなマインドセットを醸成するための活動を行う必要があるでしょう」

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サステナブル建築の第一人者であり、2025年大阪・関西万博でのパビリオンの設計も担当しているイタリア人建築家・Mario Cucinella氏の議題は「リジェネラティブな開発」。

「建築が世界のエネルギー消費量の35%、CO2排出の40%を占めるという試算もあるなかで、生活のクオリティを担保しながらも、環境のことを考えた設計が求められている」と話し、日陰を作ることにより建物内を快適な温度に保つガーナの建築や、風通しを良くすることで空調の利用を削減したイタリアの建築など、その土地の気候データを分析し、設計された建築の実例を紹介。

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オープンデザインやオープンコンサルテーションを行うGehl社のSophia Schuff氏は、本拠地であるコペンハーゲンのケースを中心に「都市の活性化:北欧における再生の実践」について語った。

「現在コペンハーゲンは生活がしやすい都市と称されていますが、数十年前は全く違っていました。そこから定性的かつ定量的なデザインプロセスを経ることで、人が集う都市へと変化をしていったのです。これからの時代、人と地球を中心に、健康的で持続可能な都市開発が求められています」

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続いてFFIのSara氏と建築家のMario氏、Gehl社のSophia氏によるクロストークが行われた。

それぞれの分野で活動をしてきた3人が直面した障壁と解決策、COVID-19により人々の生活・行動・意識が変容する中で、どのようなモデルが求められているのかなどを、それぞれの立場から語った。

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23年間リジェネラティブシステムを学んできたTrue West VenturesのTim West氏は「相互主義の考え方-蝶・キノコ・羊飼いの意外な共通点の例」をテーマに、自然界のリジェネレーションとビジネスの共通点について語った。

「羊飼いと羊、キノコと樹木、樹木と蝶は相互関係にあり、共生しています。これまでのビジネスは利益重視のコスト主義で、社会や環境にコストを押し付けてきましたが、今後は自然の相互関係を理解して、ビジネスを再構築していくべきです。サステナブルなフードシステムの構築に挑んできた Google、非営利組織にしながらも年間1億ドルもの利益をあげているパタゴニアのビジネスモデルはその好例でしょう」。

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続いては「リジェネレーションと世界標準の経営の未来」をテーマに早稲田大学の入山章栄氏とForbes JAPANの谷本有香氏によるトークセッションが行われ、世界中の識者と接点を持つ2人が出会ったリジェネラティブなメッセージが紹介された。

”オーガニックの母”と呼ばれるAlice Waters氏の「食物は一番、自然や環境と繋がっている。だからこそ食に対して能動的にリジェネラティブな活動を行う必要がある」、高級ブランドで知られるBrunello CucinelliのCucinelli氏の「これからの時代は大きさや速さが重視されてきた資本主義とは違う指標が欲しい。資本主義社会でビジネスをする以上、企業として儲ける必要はあるが、重要なのは自然の理に沿う経営だ」といった言葉のほか、これからの日本企業の経営にこれから必要とされるものなどを紐解いた。

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シグマクシス・インベストメント 柴沼俊一氏は「リジェネラティブ&ウェルビーイング」な社会を経営者としてどのように追求していくのか、社会にどう関与するべきかを語った。


「自前主義、人・モノ・金のインターナルマネジメント、組織マネジメントの3つが従来型の経営でしたが、これからはエコシステム思想、顧客やパートナー他社と連携するエクスターナルマネジメント、デジタルや自然をフル活用した組織+アーキテクチャーが求められている」とし、諸国のデータを元に解説した。

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午前の部の最後はFuture Food Instituteの深田昌則氏、TOKYO FOOD INSTITUTE 代表理事/東京建物の沢俊和が登壇し、「日本の文脈からひも解くRegenerAction」をテーマにしたトークセッションを行った。

「リジェネラティブは多角的である一方、分かりづらいと思われる方も多いでしょう」(深田)、「サステナブルの次と語られがちですが、例えばアーバンファーミングから始まるコミュニティや地域ブランドの活性など、売り手・買い手・環境に良い、三方良しのような、サステナブルとは違う考え方と捉えるべきでしょう」(沢)と語った。

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日本企業が実践するリジェネラティブ事例(後編へ続く)

 

 

<文 / 林田順子>