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【イベントレポート】日本初開催!BCCイノベーションによる「ガストロノミーイノベーション教育プログラム」in 東京 Food
Innovation

【イベントレポート】日本初開催!BCCイノベーションによる「ガストロノミーイノベーション教育プログラム」in 東京

先駆的な料理の学術機関として知られるスペイン・サンセバスチャンの料理大学Basque Culinary Center(BCC)。そのガストロノミー専門技術研究機関であるBCCイノベーションから、R&Dシェフ2名が来日。東京建物とTokyo Food Instituteの共催により日本初の「ガストロノミーイノベーション教育プログラム」が2023年10月18日に行われた。

1 1BCCイノベーションのシェフリサーチャー

東京建物は、東京駅前の八重洲・日本橋・京橋エリアで、食を中心としたリジェネラティブな街づくりに取り組んでおり、2025年頃を目処に、東京ガストロノミー・イノベーション・キャンパス(仮称)の設置を目指している。BCCの提供する教育プログラムや、日本の食文化に合わせた日本独自のプログラムを提供するだけでなく、シェフ・科学者・食企業など、横断的なコラボレーションを行うことで、食の新たな価値創出を狙っている。本イベントは、そのイントロダクションとして食企業のR&D担当者・科学者とシェフを対象に、2部制で開催。BCCが学外でこのようなプログラムを行うことは世界的にも珍しく、アジア圏では本イベントが初の提供となった。

 

第1部、美食と科学の融合を食のR&Dにどう反映するか

 

「ガストロノミーサイエンス思考の新商品開発」をテーマにした第1部は、京橋にあるKitchen Studio SUIBAで行われ、日本を代表する大手食品企業のR&D担当者や、食にまつわる研究を行うアカデミア20名が参加。アップサイクル、発酵、新素材など、近年の食のトレンドに焦点を当て、これらをいかに新商品開発へと応用するかが披露された。

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ガストロノミーが文化的、歴史的、地域的な影響を受けていること、調理法や食材の組み合わせが製品に与える影響など、テクニックだけでなく、考え方についても言及。また、ガストロノミーサイエンスが実際、どのように製品に落とし込まれてきたかを体験してもらおうと10種類ほどの試食も用意された。

2用意された数々の食材

例えば、1997年に革新的な調理法で話題となった「Cyber egg」。客自身が外側の透明のフィルムを突き破り、内側の卵黄料理を楽しむというもので、美的感覚に基づく破壊的料理の例として紹介された。

3Cyber egg

持続可能な商品開発として紹介されたのは、赤唐辛子に比べ、高級品とは見なされていない緑色のエスプレット唐辛子を活用したソース。日の当たらない食材に、新たな付加価値を与えている。

どんぐり味噌は、世界のある地域で用いられる発酵技術と、別の地域の原料を組み合わせたもの。発酵技術が世界において、異文化融合し、革新的な商品開発を生み出した好例である。

5どんぐり味噌

豚の血を使ったイタリアの郷土料理「サングイナッチョ」は、ある文化で伝統的なものが、別の文化において創造的で革新的な料理として捉えられることを示した。

本セッションでは、参加者それぞれが刺激を受けたと感想を寄せた。

6 2真剣に耳を傾ける食品企業のR&D担当者と科学者の方々

「すごく刺激的で、弊社との大きなギャップを感じた。サステナビリティのアクションを義務として捉えず、クリエイティブで楽しい取り組みになっていたのが印象的だった」

「社会貢献や健康を食で表現していて、それを身をもって体験できたのが楽しかった。私自身も分子調理について研究しているが、今回のイベントはそれよりもはるかに新しい食材やテクノロジーで作られていたので、負けられない気持ちになりました」

「加熱制御を研究していますが、非常にエキサイティングな体験でした。世界中の文化に根ざした食材を使って、廃棄物も再利用する発想で料理を捉えている。このような観点を私自身もっと取り入れるべきだと思いました」

6 1イベントは日英同時通訳で開催

また参加者からは「現在の商品開発において、サステナビリティは避けては通れない課題であるが、実態として商品までに落とし込めていない」「あるべき姿を見せてもらったが、会社の中で次にどうアクションを起こしたら良いか分からない」という、企業特有の課題も挙がった。これらの課題は東京建物とTFIが現在、日本の食のエコシステムに携わる様々なプレーヤーにインタビューをし、課題をいかに打破するかを探っており、BCCと共に今後のプログラムに反映していく。

またBCCイノベーションでは、様々な国や企業に技術提供を行っており、今回参加した企業からも、海外市場に向けて既存商品の新たな価値創生への協力を求められるなど、本プログラムを入り口に様々なコラボレーションが生まれようとしている。

 

第2部、ガストロノミーサイエンスを追求した料理を学ぶ

 

第2部ではシェフを対象に「ガストロノミーイノベーションのためのサステナブル料理」をテーマにした講座が同じく京橋のTokyo Food Labで開催され、シェフ10名が参加。

レストランにおけるイノベーションのツールとして、ガストロノミー・サイエンスの応用に焦点を当てたワークショップとテイスティングセッションが行われた。

8参加されたシェフの方々

ワークショップでは、ガストロノミーの基本原理とレストラン産業における役割や、調理技術の科学的側面など、調理に対する考え方のほか、料理のプレゼンテーションやフードペアリング、調理工程における科学的な分析など、調理法についても解説。

7料理のプレゼンテーションの様子

テイスティングセッションでは、第1部とは異なる、よりレストランに特化した試食が用意された。

新北欧風のアプローチを表現したのが、干し草で燻製したクリーム。最初に干し草の香りを嗅ぎ、それが料理にどのように落とし込まれているのかを体験した。

9 1燻製に使用した干し草

また、脂肪、固形分、塩分、糖分のバランスと配合に関する新しい考え方を提案した「オリーブ・プラリネ」は、オリーブオイルをグラインダーにかけることで、見た目以上に味に深みが出ると感想が寄せられた。

そして、カリフラワー、ホワイトチョコレート、豚皮を使った一品は、フードペアリングの考え方を取り入れたフレーバーイノベーションを提案していた。

11カリフラワー、ホワイトチョコレート、豚皮を使ったフードペアリング

講師、参加者ともに食のプロフェッショナルであることから、2部では講義中も調理方法や食材など様々な質疑が寄せられ、双方にとって刺激的な時間となった。

12参加したシェフの方々

「世界中にいろいろな食文化がある中で、美食の街、バスクの伝統的な発酵方法や、魚、肉の使い方を知ることができた。今回得たものを、是非うちのスタッフたちとも共有したいと思っている」

「BCCには一度訪れたことがあり、感銘を受けたことを覚えていて、日本にも同じような学術機関ができるかもしれないと知り、ワクワクしている。知っていた食材も、なぜこういった料理が生まれたのか、どこから生まれたのかを言語化して味わうと、違う価値を感じた。食材やテクニックだけでなく、これからの時代に向けた料理人の使命や役割についても学ぶことができた」

13テイスティングの様子

BCCと東京建物とTFIは、2025年のキャンパス設置に向けて、2024年度には短期コースの開催も企画中。イベントやプログラム単体で終わるのではなく、シェフ、科学者、企業とのコラボレーション、スタートアップとの連携など、さまざまなアプローチを提供していく予定だ。

 

<文 / 林田順子>