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第三週参加レポート「再生型漁業とシステム思考」 Food
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第三週参加レポート「再生型漁業とシステム思考」

「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP JAPAN EDITION」 第三週参加レポート「問題の本質を探るシステム思考と再生型漁業」

 

2022年4月18日〜4月22日にかけて、「FOOD & CLIMATE SHAPERS DIGITAL BOOT CAMP」の第三週目、「再生可能な海洋」に注目したセッションが実施された。参加者はこのセッションを通じて、漁業および海の再生を実行するための考え方に触れた。また、漁業関連企業や起業家の方から、今日の漁業に関連する環境と社会問題について直接学んだ。セッションを通じて、植物由来の魚介類や海産物のトレーサビリティ・透明性が漁業の再生につながることを認識することができた。本レポートではその一部を抜粋して紹介する。

 

今週の学び

  1. 繁栄思考(prosperity thinking) から始まる再生
  2. 社会課題と持続可能性を結びつける
  3. 持続可能な再生型漁業実現のための透明性とトレーサビリティ

 

繁栄思考(prosperity thinking) から始まる再生

 

繁栄思考(prosperity thinking)は、地球の環境が保護される範囲で、すべての人間のニーズを満たす世界を設計するためのアプローチである。経済成長だけでなく、社会的、環境的な豊かさを含めた集団的な「繁栄」の概念を共有し、より良い食料システムの設計を可能にすることを目的としている。デザイン思考の進化形として、このアプローチはユーザー中心のデザインを超え、人間や地球を中心とした成長を目指す。

当日は、Future Food Instituteのデザイン部長Chhavi Jatwani氏と、ボローニャ大学の教授でAlmacubeのオープンイノベーション・プログラムのディレクターであるMatteo Vignoli氏が登壇した。また、セッションの中では、アイスバーグモデルを通じて、課題の本質を見つけるアクティビティを実施した。普段私たちに見えている課題は、実際には氷山の一角であり、出来事という表面だけをみて行動することに慣れているため、パターンや構造、メンタルモデルなどを忘れやすい。アイスバーグモデルに従い、深層にある課題を探ることで、本質的な課題解決が可能となる。

1
アイスバーグモデル

 

社会課題と持続可能性を結びつける

 

海には多くの課題が山積している。氷河が溶け、サンゴは白化し、海面の上昇が起こり、人間の活動はこれらの課題に拍車をかけている。持続不可能な漁業や養殖により、魚の個体数が減少し、乱獲による生物多様性の減少と養殖による海洋の汚染は、人間の生活に大きな影響を与えている。その中で、私たち人類は2050年までに98億人をいかにして養うか、というもうひとつの大きな課題に直面している。

こうした漁業の現状に対して、持続的な海産物を生産しているのがFoodfulである。今回は、CEOのStine Norum氏より、海における課題に立ち向かう、未来の食品について話を聞いた。Foodfulの特徴は、費用と時間がかかる培養魚肉の研究を進めると同時に、培養魚肉に先駆けてプラントベースの魚肉や養殖魚介類の生産を行っている点である。プラントベースの魚介類は、ブラックパールペッパー(※1)や海藻をメインにして作られているそうだ。Stine Norum氏自身はダボス会議にも参加し、世界のリーダーたちにも呼びかけを行っている活動家でもある。参加者から、大企業もそういった持続的な食材にシフトしていくことができるか?という質問が出た際に、以下のように話していた。

「持続的な魚介類というトピックをもう少し大きく捉え、実際の社会課題と結びつけていくことが大切でしょう。今持続的に転換することで、今後社会的にどのようなインパクトを与えられるか?を考えることが重要になります。」

Foodfull
プラントベースのサーモン(Foodful 公式サイトより引用)

※1 アメリカ原産のナス科トウガラシ属の多年草。寄せ植え用の植材や欧米ではクリスマスのリースのオーナメントとして利用される。

 

持続可能な再生型漁業実現のための透明性とトレーサビリティ

 

日本を含めた世界の漁業における課題の多くは、漁業活動の透明性とトレーサビリティが不十分であることが関係していると考えられる。世界の漁獲量の約20-25%の水揚げが違法に漁獲され、海の再生が追いつかず、地域経済や海洋資源評価に大きな影響を与えている。また、これらの違法漁業には、東南アジア諸国における強制労働や人権侵害の問題、偽装表示などの問題にも関連している。そして、これらの問題は、海外から魚を輸入している日本も他人事ではないのである。特に、日本においては前述のトレーサビリティの課題に加えて、漁業就業者の高齢化と就業者数減少の課題も挙げられる。

UMITO Partnersは、水産エコラベル認証コンサルティングや持続可能な漁業への転換、DX化支援などを通じて、「100年後も続く漁業と地域を目指した事業の創出と伴走」を目指す。本セッションでは、代表取締役社長である村上春二氏より、同社が提供するサービスの一部と、持続可能な仕組みを整えることの重要性を学んだ。
同社はこれまでに日本国内で様々な地域・海産物について、持続可能な漁業に転換するプロセスをサポートしてきた。扱ってきた海産物は、スズキ、ギンザケ、ビンチョウマグロ、ミズダコなど多岐に渡り、以下に具体的な施策を一部紹介する。

  • ブロックチェーン技術によるトレーサビリティの向上
  • 資源管理計画の導入
  • 養殖業のスマート化
  • 餌をASC(エコラベル認証)対応型に変換
  • 混獲魚種の軽減
  • 漁協・県・研究者らとの勉強会や協議
  • 販売戦略チームの構築

これらの取り組みを通じて、持続的な漁業への転換を支援している同社だが、最終的には自分たちの介入なしに循環する、真の持続性を目指し、日々漁業のサポートを実施しているそうだ。

 

今週のテーマである再生型漁業の実現には、繁栄思考が重要となる。経済成長だけでなく、社会的、環境的な豊かさを含めた集団的な「繁栄」を念頭に行動することは、地球環境に関する種々の課題解決につながるのではないだろうか。
次回は持続的な食卓(Regenerative Kitchen)に関するテーマをレポートします。お楽しみに。

 

<執筆/藤澤みのり>