MENU
【河瀬璃菜氏 3/3】ものづくりを成功に導くためのチームの作り方 Food
Innovation

【河瀬璃菜氏 3/3】ものづくりを成功に導くためのチームの作り方

6次産業化による地方活性化に期待が集まっているが、マーケティングやブランディングの重要性、生活環境の違いや消費者ニーズなど、都市圏と地方とでの認識の差は大きいことも多い。そしてこの認識の違いは、外部から商品開発やブランディング事業者として関わるときに開発の妨げとなることもある。食品メーカーや地方自治体からこれらの仕事を依頼されることが多い河瀬璃菜氏は、いかにしてこの問題に向き合っているのか。

 

目次

  1. ものづくりの根源はコミュニケーション
  2. ゼロイチではなく、10まで育て上げていくことが大切
  3. 継続のために重要なチーム力

 

ものづくりの根源はコミュニケーション

 

「まず、ブランディングや商品開発において、短期的に関わって成果が出ることは稀だと思っています。作って終わりではなく、どのように成長させるかが大事だと考えているためです」

そのため河瀬氏はスポットで仕事を受けることはほとんどなく、基本は年間契約となっている。プロジェクトを成功させるためには、コミュニケーションを重ね、信頼関係を構築することも必要だと考えているからだ。

「ものづくりをしてきた人たちにも自負がありますから、彼らの意識をすぐに変えるのは難しいことです。地域によっては排他的な部分もあり、いかに我々を受け入れてもらうかはよく悩みます。ただ、結局はコミュニケーションを重ねて信頼関係を育むことで、耳を傾けてもらうしかない」

また、自分が良いと思ったもの、関わったものは長く応援し続けていきたいという思いもある。

「行ってみていいと思った街、出会った人たちの元には、プロジェクトが終わっても、プライベートで定期的に足を運んでいて、その際にはSNSなどで発信もしています。最近のSNSマーケティングのように1回バズったから成功という話ではなく、長期的、継続的なつながりや発信が大切だと感じています」

 

ゼロイチではなく、10まで育て上げていくことが大切

 

仕事を離れても、河瀬氏が発信をし続けるのには理由がある。

「ものづくりの現場では、作ることがゴールになりがちです。でも本来はそこがスタートで、そこから育てていくことが重要なのです。私は商品でも店舗でも、完成した段階で120点なんてことはまずあり得ないと思っています。完成してからも模索を続け、ブラッシュアップしていくことが大切で、単発で結果を出せるとは正直思っていません」

ものづくりに正解はない。だからこそ失敗を恐れず、新しいことに挑戦し、試行錯誤を繰り返していく。その先に長く多くの人に愛される商品が育まれる。

「私はどれだけバッターボックスに立ったかが重要で、アクションを起こして、トライアンドエラーを繰り返すことが大事だと思っています。ただ、これは簡単そうに見えてすごく難しいことです。開発が終われば、日々の他の仕事に時間や体力をとられます。そんな中で、ずっと商品への熱量を持ち続け、挑戦をし続けられるモチベーションが必要になる。だけど、バッターボックスに立ち続けていれば、きっとホームランを打てるときが来ます」

ホームランが出たからといって、河瀬氏の関わりが終了するわけではない。次のフェーズに移行したり、別の商品に派生をしたり、さらに多くの消費者に届くよう、河瀬氏のチャレンジは続く。

「最終的には、良いものを提供する企業や人達に正当な利益を得てほしいですね。そして事業が継続されることを一番に考えています」

 

継続のために重要なチーム力

 

とはいえ、一人の人間だけでプロジェクトを継続していけるものではない。プロジェクトでは、クライアントも含めた現場のチーム力も大切になってくる。

「依頼してくださっている企業や組織の社員の方を含め、チームとして一緒に作り上げていくという価値観で仕事をしたいと思っています。例えばトップダウンの組織になると、なぜ数字が上がらないんだ、売れてないんだとトップ層が事業担当者に追求しがちです。でもチームであればそれは全員の責任であり、それぞれの役割分担に沿ってきちんと行動を起こさないといけない。他人頼みの人がチームに1人でもいると、チーム全体の士気にも関わりますし、均衡が崩れやすくなります」

とはいえ会社組織の場合、担当者の熱量やスタンスは様々だ。なかには仕事と割り切っている人もいるだろう。

「トップにやる気があっても、現場がただ仕事だからやっているみたいなテンションだと、作業も難航することが多く、時間がかかりやすい。そんなとき、私は仕事以外の雑談を担当者の方々とよくします。コロナ禍でリモートワークが増え、雑談の機会が減っていますが、雑談をすることで距離感も近づきますし、その人の思考や趣向などが見えてきて、アイデアが生まれることもあります。雑談から生まれるものはとても多いんです。どんなプロジェクトでも、結局は人と人とのつながりで、お互いに信頼関係があるかどうかが鍵となる。だからときには一緒にサウナに行くこともあるくらい、ガッツリとお付き合いをさせていただきます(笑)」

クライアントに熱量を求めるからこそ、河瀬氏も実際に試食をしたり、体験をして、これなら熱量を注げると思う案件しか受けない。実際に多くのオファーを断っているという。

「試食や体験をして、“ちょっと私には微妙でした”とはっきりお断りをします。それは私の発言を信用して買ってくださる方、これまで関わったプロジェクトの方に失礼だと思うからです。これからもこのスタンスは変わりません」

商品プロデュースは長期戦。体験を重視し、応援したいと思えるものに対し、何度もバッターボックスに立ちながらチームで商品をブラッシュアップしていく河瀬氏。そこには、プロモーションやクリエイティブのスキルだけではない、日々のコミュニケーションの積み重ねによる現場との信頼関係を愚直に構築しているからこそ成功に導くことができるのである。

そんな河瀬氏が、今後どのような商品に熱を注いでいくのかも気になるところだが、これからは自ら商品を発信するプロジェクトも考えているという。河瀬氏が日本全国で見つけた食材がどのように消費者に届けられるのか、楽しみにしたい。

 

河瀬 璃菜
Rina KAWASE
Ok3 1

料理家、フードプロデューサー
㈱SOU 代表取締役 ㈱UNAKEN取締役CCO
1988年5月8日生まれ。福岡県出身。
料理家/フードプロデューサー/SOU㈱ 代表取締役/㈱UNAKEN 取締役CCO
全国を飛び回り、正しく素敵な企業や人達が作る食材/製品の価値と想いを形に変え、消費者との間の架け橋に。
レシピ、商品、ブランド開発~育成、撮影まわりのこと、執筆、六次産業支援、コンサルまで幅広く手掛ける。

【SNS】
Twitter:https://twitter.com/linasuke0508
facebook:https://www.facebook.com/ka.lee.5680
Instagram:https://www.instagram.com/linasuke0508/

 

 

<文 / 林田順子>