TFIが東京都『TOKYO SUTEAM』協定事業社に採択 食&アグリ領域のスタートアップ共創支援を加速
Tokyo Food Institute(TFI)は、東京都が実施する多様な主体によるスタートアップ支援展開事業『TOKYO SUTEAM(SUTEAM)』の令和6年度協定事業社として、Basque Culinary Center(BCC)の『Gastronomy Open Ecosystem』とCIC Institute(CIC)を連携事業者として採択されている。
今回はSUTEAMにおけるTFIの具体的な取り組みについて、TFIの沢田明大に話を聞いた。
TFIのスタートアップ支援事業を紐解く
東京都は「Global Innovation with STARTUPS」として、5年間で「東京発のユニコーン企業数を10倍」、「東京の起業数を10倍」、「東京の協働実践数を10倍」とする「10×10×10」の実現を目標に掲げており、この実現に向け、令和5年度からSUTEAMを実施し、多様なカテゴリーのプレーヤーとの連携を推進している。
TFIは、令和5年度のSUTEAMにおいて、東京建物が代表で採択された事業の連携事業者
を務めていたが、令和6年度のSUTEAMでは自身を代表として採択されている。協定期間は、令和6年10月~令和8年3月31日までの1年半だ。
「従来はピッチコンテストなどを通じてスタートアップを支援しており、フード分野を主体とする活動が他に例を見ないと評価されてきました。さらに、スペイン・バスク州のBCCや、イタリア・ボローニャを拠点に世界各都市で食のエコシステムを構築するFuture Food Institute(FFI)と協働していることから、日本のみならず、グローバルに活動を展開できることも評価され、今回の採択につながったと考えています。」
TFIでは2026年3月までに、フードテック関連のスタートアップ・ピッチコンテスト3回、シンポジウム1回、教育プログラムに関わるグローバルネットワーキング6回、パネルディスカッション2回を、それぞれ650名規模で実施する計画を掲げている。加えて、アクセラレーションプログラムも展開しており、国内企業との協業を支援する「国内プログラム」、海外のプレイヤーとの接続による技術開発支援や海外展開を促す「海外プログラム」の2コースを設定し、各3社以上、約3ヶ月間にわたり実施することで、参加企業の成長を支援する。これらの取り組みを通じ、単なるスタートアップ支援にとどまらず、新たな食の価値を創出・共創するコミュニティ形成を目指している。

SusHiTech Tokyo 2025 東京建物ブース内にてTFIが設計したピッチの様子
「なかでも我々が重視しているのは、アクセラレーションプログラムです。ミートアップやピッチコンテストで集うことも重要ですが、優れたスタートアップを発掘するだけでなく、育成し、多角的に支援する『セカンドフェーズ』は極めて重要です。協業先のCICではすでに各種施策を検討しており、スタートアップのネットワーク拡大を支援するとともに、詳細なヒアリングに基づき不足部分を補完していく体制を整えています。」
その一例として挙げられたのが、2023年に東京建物とFFI、TFIが共催した『RegenerAction Japan2023』のピッチコンテストでFFI賞を受賞したシーベジタブル社だ。同社はアクセラレーションプログラムで国内プログラムに選出されている。
「2023年の受賞後、同社も多様な取り組みを進めてきましたが、さらなる事業発展のための共創先を探しており、本プロジェクトでは新たな企業への面談を支援しました。結果として、良い協業先と接続できたと報告を受けています。資金調達や事業スキーム構築の支援も含め、スタートアップ支援は多角的に行う必要があると改めて実感しています。」
海外への具体的展望を得られる海外プログラム
海外プログラムでは、当初はBCCへの渡航支援を1回予定していたが、2回に拡大し、さらに現地とのオンラインでのメンタリングセッションを15時間をそれぞれ実施する。
「例えばサステナビリティやリジェネラティブというキーワードは、欧州が世界をリードしているため、海外展開において欧州は非常に重要なマーケットと位置付けられます。その中でBCCに直接赴き、食を360度の視点で捉えることは、今後の事業拡大につながると考えています。」
海外プログラムに参加する和田フードテック社は、ホットチェーン弁当自動販売機を事業の主軸とし、欧州市場への展開を志向していた。「1回目の渡航では、欧州における弁当需要の有無や、求められるメニューなどをリサーチし、BCCの学生とビジネス開発を行いました。」
また、環境指数を可視化するクロンクロップ社は、「渡航を通じて欧州市場で適合する企業や、提供可能なサービスの方向性を模索し、その後自社でも欧州に渡航、企業連携へと進展しています。」ネットワーク豊富なBCCにより海外企業と繋げるだけでなく、事業スケールの具体的展望を得ることができた点を評価する声が寄せられています。2026年に予定される渡航により更なるグローバルでの発展が期待される。

GOeのシェフリサーチャーに対して、自社の欧州展開について説明するスタートアップ
協定事業社へのSUTEAMの支援は原則1年半と期限が設けられている。「安定的な支援継続こそ重要」と沢田が語るように、今後いかにスタートアップ支援を継続できるかが課題となる。
「日本に優れた技術があっても、世界的評価を得て、市場変革に至るまでには時間がかかります。グローバル展開には、複数年にわたる継続的な取り組みが必要であり、海外の基準や市場のスピードから取り残され、国内だけで完結した技術や事業になってしまう、いわゆる”ガラパゴス化”を防ぐことにもつながります。そのため協定事業社はSUTEAMで支援のベースを作り、支援を継続可能な体制に整えることを東京都に求められています。複数年に渡り安定した支援を行うため、スタートアップを支援したいという意欲を持つ企業などを巻き込みながら、発展させていきたいと考えています。」
スタートアップの裾野拡大を促すイベントも開催
さらに、TFIはSUTEAM受託事業の一環として2つの主要イベントを実施している。
1つは2025年10月26日(日)にCICとの共催で行われたフード&アグリテックのYouth Summitだ。本イベントは新たな試みとして、学生を主たる対象としている。
「多くのスタートアップと関わるなかで、大学発の技術や在学中に起業した事例が一定数あることが明らかになりました。このことからスタートアップの裾野拡大において、学生支援も重要だと思っています。どのような成功への道筋や支援が存在するのかを提示し、可能性を示唆する場にするのが目的です。さらに起業するまでには至らないアイデアを共有・議論する場は意外と少ないため、アイデアピッチコンテストも行いました」

2つ目は毎年BCCと共催しているCulinary Action On The Road by BCCである。今年は12月に開催し、例年とは構成を変え、スタートアップ向け教育プログラムを実施した上で、コンペティションを行う二部構成を予定している。
最後に沢田氏は日本のスタートアップ環境への問題意識を語った。
「日本はスタートアップのプレイヤーが圧倒的に少ないのが現状で、起業や支援を求める際の、心理的ハードルはとても高いと推察しています。まずはTFIへはイベントなどで気軽に接点を持っていただきたい。実質的な支援には応募資格を設けていますが、多様な企業とのネットワークと実績を有しており、ディスカッションのパートナーや、アウトプットの場としてご活用いただければと考えています」
TFIでは、今後も産官学の連携を基盤に、多角的なスタートアップ支援を予定している。次なる一歩を模索するスタートアップや、共創を視野に入れている企業にとって、その活動は重要な機会となるはずだ。
沢田 明大
Rocky SAWADA

一般社団法人Tokyo Food Institute事務局長。
北海道帯広市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、東京建物株式会社にて、住宅事業を担当し、米国東京建物駐在を経て、国内外不動産のクロスボーダー取引を担当。2021年より、サステナブルのその先“リジェネラティブ”な社会を東京から実現するため、様々なみなさんとFOOD食を軸とした共創とイノベーション創出をサポートしている。
<文 / 林田順子>