【イベントレポート】食の未来をつくるキャンパス「Gastronomy Innovation Campus Tokyo」OPEN
2024年11月7日、東京建物は東京八重洲ビル内に新たな食のキャンパス「Gastronomy Innovation Campus Tokyo」(GIC Tokyo)を設立。その新施設に、当社団理事の石川伸一氏がサイエンスアドバイザー 、当社団アドバイザーの外村仁氏が、コラボレーション・スタートアップ 分野のアドバイザーに就任した。そのオープニングパーティの模様とともに、GIC Tokyoの全容をレポートする。
美食の街として知られる、スペイン・バスク州のサンセバスチャンに2011年に設立されたBasque Culinary Center(BCC)は、食を全方位から学べる先鋭的な学術機関として世界中から注目を集めており、これまで多くのシェフや食企業とともに食の新しい可能性やソリューションを提供してきた。そのBCCが次世代教育と事業共創のために立ち上げたプラットフォームが「Gastronomy Open Ecosystem(GOe)」だ。GIC Tokyoは、このGOe初の国際拠点となる。BCCの美食と科学を融合したカリキュラムを受講できるほか、発酵学や長寿につながるメニューの開発など、日本の食文化や歴史に合わせてカスタマイズしたGIC Tokyoオリジナルのプログラムを開発・提供予定で、オリジナルプログラムについては、BCCでの提供も予定している。
「東京建物とBCCはパートナーシップを組み、2022年からグローバルエコシステム推進のため、東京でシェフや科学者、企業のR&Dを対象にした教育プログラムを開催してきました。これらの経験を通じ、BCCから学ぶだけではなく、相互に世界の食をより発展させるための施設としてGIC Tokyoは開設されました」(東京建物株式会社・沢田明大氏:以下「沢田」)
Photo by @kimurabungo
「我々がグローバル展開を考えたときに、さまざまな条件が考えられました。才能を持ったタレント、イノベーション、それを構築するストラクチャー。そして、サステナブルであり、ヘルシーであり、おいしいこと。これらを完全に網羅できる場所が東京であると考えました。これまでガストロノミーは星付きの高級レストランでのみ展開されるものでしたが、BCCという教育の場ができたことで、一般の人たちにも知見が広がり、彼らが得た情報はさまざまな形に発展をしていきました。知見を伝えることはとても大切ですが、それを受け取った人々が自らの環境で実践し、発展させていくことがさらに重要です。それを持ち帰った人々が育てることはより重要です。GIC Tokyoがスタートアップ、企業、シェフ、研究者、フーディー(美食家)など、食にまつわるさまざまな人に知見を提供することで、新たな食の未来を広げていきたいと思っています」(BCC・GOeグローバルディレクター・Asier Alea氏)
Photo by @kimurabungo
このキャンパスでは、レストランにおけるイノベーション創発やサステナブル戦略など、BCCのカリキュラムを中心に据えつつも、豊かな食文化を持つ日本独自のコンテンツも展開する。また3Dフードプリンターなどの最新フードテックから、凍結乾燥機や遠心分離機などの科学研究機器も設置し、ガストロノミーとの異分野融合を目指す。
「日本では科学者がさまざまな研究を進めているが、シェフなどとのコラボレーションができていないと感じていました。GIC Tokyoでは科学者からシェフに向けて研究へのアウトプットができるようなティーチングプログラムも行う予定です」(沢田)。
また、情報化社会にありながら、日本には地方で埋もれたままの食文化もまだまだ多い。GIC Tokyoでは地方とのアライアンスにより、観光における美食体験を提供するなど、日本の食文化の集結・グローバルへの発信を行い、食の中心地も目指す。
隣接するカフェには、ミシュラングリーンスターを獲得した日本橋馬喰町のレストラン「nôl(ノル)」の野田達也シェフをアドバイザーに迎え、リジェネラティブに配慮したメニューを提供。また、飲食の提供だけでなく、さまざまな食のプレイヤーが集うことにより、共創の場としてイノベーティブキッチンとしての発展を目指す。
Photo by @kimurabungo
「調和と循環をテーマに料理をしてきて、レストランの枠を超えて、世の中に対していかに還元できるかを考えて活動をしてきました。デベロッパーである東京建物が食に関するアカデミーを立ち上げることに驚きましたし、新しい時代が始まると予感しています。今回のプロジェクトに参加させてもらうことに、期待と責任を感じています」(野田達也氏)
オープニングパーティには、BCC・GOeグローバルディレクターのAsier Alea氏やBCCのサイエンティストJuan-Carlos Arboleya氏も駆け付け、乾杯では鏡開きに代わり、レモンの木に水を注ぐ植樹の儀も執り行われた。
また、石川伸一氏、外村仁氏より、世界をリードするイノベーションがGIC Tokyoから生まれることへの期待を語った。
「日本にもBCCのような学校が欲しいとずっと思っていました。日本の食が世界に通ずるものだと信じ、このような学校が完成したことに本当に感謝しています。ここから世界をリードするイノベーションが起こることを心待ちにしています」(外村)
今後、GIC Tokyoは短期コースからスタートし、徐々にコースを拡充していく予定だ。
これまでBCCは共創によるイノベーションを生み出すことで、価値を創り出してきた。GIC Tokyoにスタートアップや企業が集うことで、今後のどのような食の価値が創出されるのか。今後の活動に注目していきたい。
Gastronomy Innovation Campus Tokyo (GIC Tokyo)
東京都中央区八重洲 1丁目4−16
八重仲ダイニング 地下2階
https://gictokyo.com/
<文 / 林田順子>