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【前編】アマン東京の3人のシェフが見据える食の未来とは Food
Innovation

【前編】アマン東京の3人のシェフが見据える食の未来とは

ジャンルを超えて。アマン東京の3人のシェフによる食の安全性

今年HACCP認証を取得し、SDGs専門チームも発足したアマン東京。それに先駆けて、以前から食の安全性やサステナビリティに取り組んできたのが3人のシェフたちだ。
もともとアマングループは75%以上のローカルフードを使わなければいけないというグローバルルールを設けているが、メインダイニング「アルヴァ」の平木正和総料理長、ホテル全体の食の安全性などを総括する関根崇裕副総料理長、鮨店「武蔵 by アマン」の親方、武蔵弘幸は、料理のジャンルや立場を超えて食の安全性に取り組んでいる。彼らが語る食の未来とはーー

 

料理人にとってフードロスをなくすのは当然のこと

 

平木:長年イタリアにいましたが、現地では野菜の皮や端材はブロードやピューレに、出汁を引いた後の肉や野菜は賄いにしていて。料理人であればフードロスを出さないというのは当たり前のことだと思っていました。ところが日本の現場では驚くほどフードロスがあって。意識改革の必要性を痛感しました。「切ってきれいに仕立ててお客様に出すのはいいけれど、残ったクズも食べられるのだから、大切にしよう」と若いスタッフに伝えています。

 

関根:例えば野菜でも樹に実るもの、土で育つものなどがありますが、シェフを志望する若い子でも、区別がつかない人が結構多い。単に食材としか見ていない。

 

平木:豊洲に並ぶ青果を見ても、生産者の背景やストーリーが見えないのも一因でしょう。同じ食材でも生産者や栽培方法が変われば、味が変わるのは当然です。それなのに同じように調理したら味がブレてしまう。日本とイタリアでも違いますから、僕自身、日本の食材をもっと深く知るために、積極的に生産者を巡っています。

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関根:今では平木シェフの影響を受けて、若手も一緒に巡っていますよね。先日も鴨の屠殺を見学してきたと聞きました。

 

生産現場で実感した食への危機

 

平木:コロナ前は1年で50か所ほど巡っていましたが、現地では地球温暖化の影響で本来獲れるはずのない海域の魚が水揚げされていたり、農薬や化学肥料の影響などを教えていただいて。改めてサスティナビリティの重要性を体感しています。もちろんおいしいことが第一優先ですが、当たり前のように「農薬を使っています」というものはうちでは使いません。畜産物も同じ。環境への配慮や、生産への思いを深く聞いて、納得したものを選びたい。

 

武蔵:昨年私はシャリをもっと極めたいと思い、米作りを始めました。私の祖父母が農業をやっていたのですが、昔は農薬を使っていなかったので、田んぼにはおたまじゃくしやドジョウがいたし、トマト畑に近づくと、青っぽいトマトの匂いがした。だけど農薬を使う畑ではそんなことはありません。そこで昔のような安心でおいしいお米を作りたいと思ったのです。

 

<文 / 林田順子>