MENU
Future Foodが考える世界の食の課題と日本に期待する役割とは Food
Innovation

Future Foodが考える世界の食の課題と日本に期待する役割とは

環境汚染や食糧危機、フードロス……何気なく食べている毎日の食事が環境に与える影響は、世界的な問題になっている。これらの食を中心とした社会課題解決に繋がるエコシステム構築を世界中の都市で手がけている世界最大規模のグローバルネットワークが、イタリアに本拠地を置く「Future Food(FF)」だ。

イギリス、ドイツ、スペイン、米国、カナダ、メキシコ、中国、シンガポールにも拠点を持ち、2020年にはついに日本でも始動。FFの活動、そして日本に期待することとはーー。共同創設者・代表のSara Roversiに聞いた。

 

食の意識改革に必要な3つの要素

 

残念なことに、これまでの私たちの食への考え方、選択してきた方法は誤りで、地球環境にとって良いものではありませんでした。大切な資源である土や太陽、水は許容の限界を超えているのではないか。そんな危惧から、私たちは2013年にFFを発足し、人と環境においてあるべき姿を求めて活動してきました。

 

2015年の国連サミットでSDGsが採択されると、「サステナブルであること」は世界中の企業や人々から注目を集めるようになりました。

この社会課題を解決するには、意識改革が必要で、そのために3つの要素が重要だと思っています。

 

1つめは「教育」。次世代を担う若者や子供たちに、変革の必要性と手法を伝えることで、彼らはこの社会課題を乗り越えるイノベーションを生み出してくれるでしょう。

2つめは「コミュニティ」です。実際に変革するためにはコミュニティとの協働は必須。その拠点となるようにボローニャには「スクデリアリビングラボ(SLL)」を、日本には「京橋リビングラボ(KLL)」を開設しました。ここで開催されるイベント活動は人々をつなぐ大切なものとなっています。

3つめは「イノベーション」。課題を正確に捉え、解決へと導くスタートアップや企業、そのプロジェクトを推進することが求められています。

 

記事2

実を結んだ地道なFFのプロジェクト

 

約8年の活動の中で思い出深いプロジェクトがいくつもあります。

例えば、私たちが開設したSLLは、現在ボローニャ市が率先して食関連のスタートアップとコラボをしたり、食育の場として活用しています。これは地域に新たな食への意識が浸透してきた成果です。

 

2019年9月の国連決議では、食品ロスに関する決議が宣言されました。食品ロスについて各国の大使に説明し、署名をもらう地道な活動が実ったのです。今では食品ロスの課題は、世界的に知られています。

 


日本に期待する社会課題解決の大きな可能性

 

世界が抱える社会課題を解決するイノベーションを生み出すには、世代を超えたコラボレーションが重要だと考えています。若い世代はイノベーションを生み出す力を持っていて、シニア世代にはイノベーションの源泉となるこれまで培ってきた知識や経験・情報がある。

 

特に日本においては、歴史的・伝統的な食文化が多く残り、先進国として生活は安定し、能力を発揮できる環境もあるため、他国よりもイノベーションを生み出せる環境にあると考えています。

 

一方で課題もあります。世代間の分断や、快適な生活に慣れて、社会課題解決の必要性が浸透していないと感じることがあります。

 

そのためKLLでは、世代や立場を超えて、食の取り組みの中心として人々をつなぐ場を作っていきたいと思っています。

アフターコロナでは対面での教育プログラムを再開したり、人々が繋がり、共有することで進化し、発展していくためのプロジェクトも生み出していきたい。

 

コロナにより、これまで気づかなかった共に食卓を囲むという食の精神的な価値などが再認識され、世界が将来への変化の必要性を求めている中、日本が世界をリードする可能性を感じています。

記事3

Future Food
https://futurefood.network/

 

<文 / 林田順子>